初日、タンソンニャット国際空港を出るや否や胸に社員証を付けたタクシー運転手に話しかけられた。
思わず乗車したが、だまされたと気が付いた。
なぜなら、車内ドアノブがこわされ、中から出られないようになっていたからだ。
ボッタックリの白タクには、不当な料金を払わなくてもよいとベトナム人から聞いてはいたが、払う以外に降りられないのも事実だ。
ホテル到着時に4倍の料金を支払うと外からドアを開け、旅を楽しんでと笑顔で言われた。
複雑な気持ちになったが、貴重な体験をしたと思いチェックインした。
2日目、前回訪越時に撮影した車いすの青年に写真を渡すため、戦争証博物館を訪れた。
写真を渡すと青年は涙を流し、全身で嬉しさを表現した。
その時、思ったことがある。
それは、世界の人々が友情を育んでいけば、戦争は根絶できるということだ。
言葉も大切だが、写真にはそれを超える力があると感じた。
写真を通して今後も世界の人々と友情を育んでいきたい。
3日目、チョロン地区で撮影しているとひょうきんなお爺さんに出会った。
色々なポーズを勝手に決めだし、撮影するよう促された。
数枚撮ると家の中で撮影してほしいと頼まれた。
家の中に行くのには抵抗があったが、目の前が家だったので、入っていくことにした。
若いころの写真を持ちながらVサインをしたので、3枚連射で撮影した。
思い出の写真にしてほしいと言われ、清々しい気分になったが、皆さんは異国の地で見ず知らずの人の家には絶対に行かないで下さい。
最終日、カンボジア国境付近の知人宅を探しにタクシーで出発した。
住所不明で到着するのに苦労したが、運転手が執念で連れて行ってくれた。
この運転手の熱意を感じ、思ったことがある。
人間社会はボランティアでない限り金銭が関与している。
生きるために稼ぐことは必要だが、賃金だけの仕事しかしない人や企業は衰退する。
己の人生が衰退しないよう心ある振る舞いができる人でありたいと思った。